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「動く」と「メンテできる」は、まったく違う話です

作成者: kakugawa|Jul 30, 2026, 6:45:24 AM

こんにちは、鉄飛テクノロジーの岡田です。

AIコーディングを日常的に使うようになって、一つ、はっきり見えてきたことがあります。

「動くもの」と「メンテできるもの」は、まったく違う、ということです。

これまでは、この二つは、あまり区別されてきませんでした。動くものが作れるということは、そこそこメンテもできる、というのが、暗黙の前提だった。プログラマーが、頭の中で考えて、手で書いたものだから、書いた本人が、大体は覚えている。

ところが、AIが書くようになって、これがひっくり返りました。

AIは、動くものを、恐ろしい速さで作ります。難しい仕様でも、曖昧な仕様でも、なんかゴリゴリに力技で作ってしまう。「あなたが正しいです」と相槌を打ちながら、どんどん作っていく。

できたものは、動きます。テストしてみれば、まあまあ、正しく動く。

でも、私は、そのコードの中身を、あんまりよく分かっていません。なんでそう動いているのか、正確には、把握しきれていない。人間の理解を超える大きさと複雑さで、AIは書いてくるからです。

ここが、問題です。

動くうちは、いいんです。ちゃんと動く。お客様に納品もできる。

問題は、少し先に来ます。

三ヶ月後に、お客様から「あの機能を、こう変えたい」と言われた時。私は、そのコードを、思い出せない。もう一度、AIに聞き直して、また作ってもらう。それでも動きます。動くんですが、その繰り返しをしていると、だんだん、自分のシステムなのに、自分のものではなくなっていく感覚があります。

もっと悪いのは、AIが賢くなりすぎて、答えるバージョンが変わった時。同じ質問をしても、違う答えを返してくるようになります。すると、以前作ったものと、今作るものが、微妙に噛み合わなくなる。ズレていく。

「AIには、メンテできるんだよ」と、AI推進派の人は言います。それはそうかもしれません。でも、AIにしかメンテできないシステムを、うちみたいな会社が持つべきか、というと、それは、また別の話です。

お客様に納品するシステムには、私たちがメンテできなければならない、という責任があります。「これを直すには、あの時のAIに聞くしかありません、でも、今のAIは、もう答えが違います」というのは、通用しない。

だから、意識的に、AIに全部を作らせないようにしています。

「そこはやめろ」と言う。「一歩ずつやらせろ」と言う。「もっと分割して、私にも分かる単位にしてくれ」と言う。すると、AIの速度は落ちます。せっかくの十倍の能力を、抑え込むことになります。

でも、それでいいんです。

速く動くものを作ることが目的なら、AIにフリーハンドを与えればいい。数日で、すごいものができます。

でも、「私たちの製品として、五年、十年、メンテし続けるもの」を作りたいなら、AIには手綱をつけたほうがいい。速さの一部を諦めて、理解できる範囲で作る。

この判断は、まだ多くの会社ではされていないと思います。「AIで作れるから、どんどん作ろう」という空気の方が強い。作ったあと、メンテできずに困る会社が、これから増えるのではないかと、私は少し心配しています。

製品を長く使い続けるための、地味な設計。それは、AI時代でも、消えない仕事です。